はじめに 一応みずいろSSですが、キャラクターが微妙に違っているように感じるかもしれません。 そういうのはぜったに許せない方は、ご遠慮ください。 あまり気にしない、恐いものがみたい、という方はどうぞ先へお進みください。 誰のシナリオでもない、オリジナルな状態設定です。 みずいろ featuring "Satsuki Shindou" そして少女に恋をした ある晴れた日曜日。 俺、片瀬健二は、たまには遠出としゃれ込み、電車に飛び乗って隣街まで来ていた。 知り合いに出会う煩わしさから離れ、のんびりと過ごす予定……だったんだが…… あくまで予定は予定だったらしい。 「せんぱ〜い!  こんなところで会うなんて奇遇ですね!」 そんな元気な声に振り向くと、そこには進藤が居た。 って、進藤?? なんで進藤がこんなところに!! 「お前、この街に住んでいるんだったか?」 「違いますよ。  知っての通り、あたしの住んでる街は、反対側です」 「じゃあなんでいる!!」 「いいじゃないですか!  あたしだって、たまには遠出しますよ!!」 それはそうだろうが……よりによって何で…… 「それより先輩。  こんなに気持ちのいい日曜日に会えたんですし、ご一緒しませんか?」 げぇ…… お前と一緒にいろ、と言うのか!? こんな気持ちのいい日曜日に!! 「先輩!!  なんでそんな嫌そうな顔をするんですか!!  日曜日、いつもと違うこの場所で、こんなに可愛い後輩に出会えた、っていうのに!」   確かにお前は可愛い。 この俺でも、それを認めることにさほど努力はいらねぇ。 ただし、それは見た目だけだ。 いったん口を開けば、その騒音はマシンガンの如く。 そして、そのマシンガンには弾切れがねぇと来てる。 新手の拷問に使えるぞ、それは!! 「あぁ〜!  何か失礼なこと考えてませんか!?」 「別に……」 「いーえ、その顔は絶対失礼なこと考えている顔でした。  きっと、とてつもなく酷いことを考えていたんですね!!  そうやっていっつもあたしに対して……」 うるせぇ!! こんなヤツはこうだ!! ”ガスッ!!” 「ぐぇぇぇ……」 やはり延髄は効くな…… ほ乳類全ての急所だけのことはある。 で、結論。 進藤、お前はやっぱり可愛くねぇ。 少なくとも、俺的可愛いの定義からは逸脱している! とまぁ力説したのはいいんだが…… さて、どうするか? 「ぷるぷるぷるぷるぷる……」 正直、コイツを置き去りにして、当初の予定通りの休日を過ごしたい。 ……が、さすがに本日この場では気が引けるな。 仕方ない、介抱してやるか。 どうせ進藤のことだから、数分で復帰するだろうし。 と思っている矢先に、進藤は復活した。 さすが進藤だ。 「っつ〜! 酷いですよ、先輩!!  死んだおばあちゃんとお花畑でマシンガントークして来ちゃったじゃないですか!!」 復帰するなり全開だな。 さすが進藤。 象が踏んでも壊れないだけはある。 「先輩! ちゃんと聞いてますか!!!  だいたい、象に踏まれたら壊れます!!」 「いや、お前なら壊れないだろう?」 「普通の人は壊れます、っていうか死にます!!」 「だからお前なら大丈夫……」 「それってあたしは人間じゃないって言ってます!?」 「そう聞こえなかったか?」 「そう聞こえました! 聞こえましたとも!!  先輩があたしのことをどー思っているかよーく解りました!!」 「そうか、それはよかっ……」 「ええ、ええ。  もうそれはそれは、よぉ〜く解ってしまいましたよ!!  だからですね!  こんなにか弱くて可愛らしいあたしを捕まえて、ぽこぽこ殴るのは!!!  もう、先輩ってば……」 うるさい!! 沈め!! ”ガスガスッ” 「ぐえぇぇぇ」 あ、しまった。 またやっちまった。 これじゃ介抱した意味がねぇ。 ……ふぅ、また復活するまで待つか…… と言うわけで10分後。 「ったぁ…… ほンっとに酷いですよ、先輩!!!  もう、こうなったら、今日は1日、ずっと付き合って貰いますからね!!」 はっ? またなんて理不尽なこと抜かすかな、コイツは。 「まさか断る、なんて言わないですよね!!  もしそんなコトを言うなら……」  はぁ……まぁ、いいか、たまには。 魔が差したのかもしれないが、俺はそんな気分だった。 正直、理由はさっぱり解らない…… 「……いいぜ」 「やっぱりことわ……え?」 「いいぜ、って言ってんの。  それともやっぱり止めるか?」 「ほんとうに?」 ……あ〜進藤? 何でそこでキョトンとして見つめ返してくる? 「やっぱやめ……」 「さぁ行きましょう、すぐ行きましょう、とにかく行きましょう♪」 進藤に腕を取られ、俺達は歩き慣れない街を、歩き始めた。 「ふんふんふ〜ん♪ ふんふん〜♪」 嬉しそうなコイツの様子を見ていると、何となくこんな日も悪くないかな、 なんて思っちまうんだが…… 一時の気の迷いだろう、たぶん。 なんせ、進藤だし。  「きゃっ」 そんなことを思いながら、そっぽを向いた途端、進藤に抱えられた腕が引っ張られた。 「……なに転んでるんだ、お前?」 「……え、えと……その……」 何もないところで転んだ、とか言うのかお前は? ……まるで日和みたいだな…… 「まぁいい。  立てるか? 怪我は?」 「え? あ、はい。  立てますし、怪我もないみたいです」 まだ抱えられている腕を引っ張って、進藤を引き上げる。 ……何か浮かない表情をしてるなコイツ。  「大丈夫か、進藤?」 「え、ええ!  もちろん大丈夫ですよ、先輩!!」 ぴょんと飛び跳ねて見せながら、そう答える進藤。 とりあえず、何かが吹っ切れたらしい。 訳が解らないが、コイツが元気になったので、よしとする。 しかし……コイツのこんな姿を見てると、つい頬が緩んじまうな…… 「そうか」 「はい!」 そう答えると、本日で一番のとびっきりの笑顔を見せる進藤。 ”どっき〜ん” ……不意に何かが胸を貫いた感覚。 あ、あれ? コイツ、こんなに可愛いかったっけ?? ”どきどきどきどきどき” ……おい、ちょっとまて……どうなってんだ、俺は? が、この感情、昔感じたことあるぞ? 誰に感じたかは秘密だがな。 んで、確かこの感情は……って、おいおい、まじか?? まじなのか!? 「? 先輩?  どうかしたんですか?」 やめろ進藤! そんな無防備は顔をするな!! そんな顔をされたら…… 「いつも変ですけど、今日はいつもに増して、変ですね、先輩」 よけいなお世話だ。 しかし……やべぇ……今気付いた。 俺、コイツのコト、好きなんだ。 よりにもよって、俺の好みと真逆のこのオンナに惚れるとは…… 焼きが回ったか? 「ほんとにもう!  せっかく可愛い女の子と一緒に居るんだから、  せめて楽しそうにして下さいよ!!」 「可愛い女の子? どこいるんだ?」 「ココにいるじゃないですか、ココに!」 「ココって、どこだよ?」 「先輩、頭だけでなく目も悪くなったんですか!!」 せっかく気付いた感情だが…… 今更正直になんてなれねぇしな。 どうせ進藤との会話だし、こんなもんでいい…… ……あれ?  いつもこんなに邪険にしてるのに、何でコイツは俺の周りをちょろちょろしてるんだ? 「先輩?  ホントにどうしちゃったんですか?」 普段と違い、黙りがちな俺を心配してか、覗き込むように見つめてくる進藤。 ……ちょっとまて、進藤。その顔は反則…… 「だ、大丈夫だ。  心配するな、ただの……その、過労だ」 「……本当ですか?  本当に大丈夫ですか!?」 ホントに心配そうな進藤を見ていたら、つい、手が伸びた。 「大丈夫だから、安心しろ」 そう言った時には、無意識のうちに、コイツの頭を撫でてた。  やった方もびっくりだが、やられた方はもっとびっくりだろう。 ほらびっくり……って、あれ? なんでお前、嬉しそうにしてる!? 「はっ!?  ちょ、ちょっと先輩、いきなり何をするんですか!!」 「ああ、すまねぇ、つい……」 「つい、じゃないですよ!!  これからは断ってからにして下さいね!!」 ……何かおかしなコト言わなかったか、コイツ? 「……でもいいなぁ、雪希ちゃん。  きっと、毎日撫でて貰っているんだろうなぁ……」 あ〜、誤解だ、というとそれはそれで問題が在りそうなので、黙殺しよう。 「ほら、進藤。行くぞ」 「はい!  まだまだ、行きたいところは沢山ありますから、覚悟して下さいね、先輩!!」 その宣言通り、俺は散々進藤に振り回され続けた。 ……結構楽しかったのが、何となく、悔しい。 そうこうしている内に、日が沈む…… 「うわぁ……  先輩! 綺麗な夕焼けですよ!」 「ああそうだな」 「そうですよね。とっても綺麗ですよね。  ああ、カメラを持ってこなかったことが悔やまれます。  持ってきてれば、先輩とのツーショット写真だって……  いやいや、まだ時間は……」 相変わらず元気だな、コイツ。 ったく、ほんとに……騒がしいヤツ。 「ちょっと、聞いてるんですか先輩!!」 「ああ、聞いてるよ」 おざなりに返事してやると、思った通り、よけい騒がしくなりやがった。 「ほんとですかぁ?  大体先輩はいつもそうやって……」 あ〜うるせぇ…… どうやって止めてやろう? いつも通り延髄か? しかし、いつも同じでは芸がないな。 「もう、いつもそんなことだから、あたしが苦労するんですよ!!」 はぁ? いつお前が苦労した? 苦労しているのは俺の方だ! ……人の気も知らずに…… ったく、何でこんな喧しいのに惚れちまったんだか。 気付かなきゃ良かったぜ。 ……そうか、惚れてたんだっけ、コイツに。 多分、コイツもまんざらじゃないよな。 ってことは……面白いこと思い付いたぞ。 上手くいけば、しばらくは静かになるかもしれん。 そうと決まれば即実行! 「ってまた聞いてませんね、先輩!!  ちゃんと聞いて……」 「おい、進藤」 「なんですか?」 言葉を遮ってそう言った俺に、律儀に答えてくれる進藤。 こんなところがまた可愛いんだが…… 今回は浸っていられないので、そのまま作戦継続。 なるべくそっけなく、言葉を放つ。 「うるさいから口閉じてろ」 それに対する反応は、面白いくらい俺の予想通りだ。 「なっ?! なんですかいきなり!!  大体なんでそんなことを言われなきゃいけないんですか!!」 よし、後は押し切るだけだな。 タイミングが重要だが…… 「閉じないなら俺が塞ぐ」 「どうやっ……うぐ……ん……んん……」 進藤が何か言おうとしていたみたいだが、遮って実行。 ん? なにを実行したのかって? コイツの口を塞いだだけだぞ? ……まぁ、俺の口で、だけどな…… 「ん……」 「……んん……」 ちぃっとばかり長めに、そして念入りに口を塞いでいる俺。 正直少々離れ難いのだが、そろそろ解放しないと、身が危険だな。 「ふぅ〜」 というわけで、解放。 むろん、余韻は楽しませてもらったぞ? そんな俺を、しばらく呆然と見つめていた進藤だったが、不意に爆発したように 上気して一気に真っ赤になった。 状況を認識したらしい。 右の甲を唇に押し当てながら、何やら言おうとしているようだが…… 「き、ききききききき」 おっ、混乱してるな。 ならば追い打ちを…… 「ご・ち・そ・う・さ・ま」 耳元で、そう囁いてやった後のコイツの姿と言ったら…… 癖になりそうだな、コレ。 おっと、進藤が正気に返る前に退散、退散。 「じゃな、進藤。  またな?」 出来るだけクールにそう言うと、進藤に背を向けて歩き出す。 10歩、20歩、30歩…… 「せ、せせせせせせ先輩!!  なんてことするんですかぁ!!!!!!」 おっ、正気に戻ったな? ならばダッシュだ!! 「こらぁ〜!!  逃げるなんてズルイですよ!!!  せんぱいぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃぃ!!!!」 すたこら逃げていく俺の後ろから、進藤の馬鹿でかい声が追ってくる。 捕まったらどうなるか解ったもんじゃないから、とにかく逃げる。 逃げる俺に、追う進藤。 結局こんなもんか。まだまだ、前途は多難、だな。 とりあえず、うるさいときの脅しは手に入れたし、コレで少しは静かになるだろう。 なるかな? ……まぁ別にまた口を塞いでやってもいいし? 「まてぇ〜!!!  不意打ちなんて卑怯ですよぅ!!!」 捕まえられるもんなら、捕まえてみな、進藤。 捕まえられたら……ずっとお前に捕まえられたままでいてやるから、さ? とりあえず、今は追いかけっこを楽しもう。 それくらいが、今の俺達にはあってると思うから。 まっ、のんびり行こうぜ、進藤! あとがき まずは、ココまで読んで下さって有り難うございました。 慣れてないみずいろSSな上、暴走するやかまたんで、ダメダメな展開。 しかも健ちゃんが微妙に親父臭い…… こりゃ、全国のやかまたんファンを敵に回したかな? という自己感想を持ちながら、とりあえず、終了とさせていただきます。